高齢者から幸齢者へ
生きるものは何れかそれを失う時が来るわけですが、人間の場合は平均寿命で大まかな年齢を表します。令和元年のそれは男性81.4歳、女性87.4歳です。更にもう一つ重要な寿命があります。それは健康寿命というものです。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、健康寿命は男性72.3歳、女性75.4歳です。そしてその後の「不健康な期間」が男性で8.7年、女性で12.1年あるのだそうです。人生の11%~14%が不健康な期間を過ごさなければならに事になります。この期間を人生の開始期から考えると小学生の時期までに重なるでしょう。「二度わらし」の時期です。
不健康な期間のかなりの部分は介護が必要な期間です。国立保健医療科学院の調査によると要介護2以上の認定を受けてから死亡するまでの平均余命は男性で10.2年、女性で17.6年だったそうです。そして体力の弱った高齢者を高齢の伴侶や高齢となりつつある子供たちが介護する状態が多くなってきています。或いは介護の為に仕事を辞めざるを得ない場合もありました。介護は、一日24時間目が離せない状態が続くことが多く、この事が介護をする側とされる側のストレスを高めて、家族関係が悪くなることも多いようです。最悪の場合は殺人事件にも発展することもありました。特に認知症が進行してくると、認知症という病気がなせる業と思いつつも自分の献身的な介護を認めないで意地悪してくると誤解して、ぞんざいな対応に陥りがちです。心のゆとりが必要です。
介護者の気分転換を図る事が重要です。そのために日中だけあずかるデイサービスや数日間あずかるショートステイがあります。介護保険での制度ですので介護保険を申請していただけないとこの制度は利用できません。病気での介護でも医療保険による短期間の入院により介護者の負担軽減のためのレスパイト入院という形をとる病院も増えています。
高齢者に生き甲斐を持って生活してもらうことが一番大切でありますが、人それぞれの思いがあるので十分叶えられる環境とは中々いかないでしょうが、何とかそれに近いものを作りたいものです。介護保険はそのためにあるもので、介護施設では身体拘束が禁止されています。自由な行動を保証することにより本人の満足度を高めようとしています。ただしこれも転倒し易くなった人をどのように介護・観察するかとの面で難しいものが在ります。
高齢者に生きていてよかった明日も元気で過ごそう、と思ってもらえる環境をつくっていき、幸せだと感じて日々過ごしてもらえたなら、うれしい限りです。
2024年1月1日
介護老人保健施設かなやの里
施設長 島貫政昭